突然ですが、行政書士試験の合格率がどのくらいかご存じですか。
実は行政書士試験、合格率が10%程度と、この数字だけを見るとなかなかの難関試験です。
ですが一方でごく一部ではありますが、行政書士試験は、
- 簡単
- 誰でも受かる
- 行政書士は取得しても意味ない
などと囁かれてもいます。
このように両極端な噂のある行政書士試験ですが、行政書士試験の難易度は実のところはどうなのでしょうか。
行政書士試験は簡単って噂もあるけど、合格率が10%程度って、ほとんど受かってないってことでしょ?
今回は、
- 行政書士試験は難しいのか
- 合格率10%程度の意味
を、私が実際に行政書士試験に挑戦した経験も絡めて、投稿していきます。
行政書士試験の合格率はなぜ低いのか?
行政書士試験の合格率は毎年10%台を推移しています。
絶対評価試験なので、もっと合格率が高くてもいい気がしますが、例年変わらずの合格率を維持しています。
絶対評価試験って何?
絶対評価試験は〇〇点以上の人は皆合格!という試験です。
対して相対評価試験というものもあります。
法律系資格試験の予備試験や司法試験、司法書士試験はこのタイプです。
相対評価試験って何?
簡単に言うと、上位〇%の人が合格!という試験です。
では、行政書士試験はなぜ合格率が低いのでしょうか。
行政書士試験の受験者数は、例年平均すると45,000人程です。
そして合格者数は、平均すると5,000人程度です。
数字だけ見ると、10%で5,000人合格って多く感じませんか。
この数字は予備試験・司法試験・司法書士試験と比較すると、受験者数も合格者数も圧倒的に多い数字です。
5,000人程合格しているのに、合格率は10%台なんですよね。
受験者が多いから……。
ではなぜこんなにも合格率が低いのでしょうか。
このように考えられます。
- 足切り点がある
- 試験範囲が広い
- 仕事をしながらの受験者が多い
- とりあえず受けてみる人が多い
- 複数回受験者が多い
足切り点がある
私は一般知識(基礎知識)の足切りに、戦々恐々としつつ、試験を受けていました。
まず行政書士試験の合格率が低い原因の1つとして、この足切り点の存在があります。
行政書士試験は
- 法令科目等
- 基礎知識
に分かれており、それぞれに突破しなくてはならない足切り点が設定されています。
法令科目等の足切り点 | 122点以上/244点中 |
基礎知識足切り点 | 24点以上/56点中 |
試験全体の得点 | 180点以上/300点中 |
行政書士試験では、法令科目等と基礎知識のそれぞれで足切り点を突破し、尚且つ試験全体の合計点が180点以上なくては合格することができません。
法令科目等と基礎知識どちらかの点数がとても良くても、どちらかの点数が足切りに引っかかってしまえば、その時点で不合格です。
そのためこの足切り突破が行政書士試験の合格に、大きな枷となっています。
試験範囲が広い
行政書士試験は科目数が少なくても、メイン科目の民法・行政法とボリュームのある法律なので、試験範囲を勉強するのにとても時間がかかります。
行政書士試験のメイン科目は、民法と行政法です。
条文数で言うとご存知のように民法は数多くの条文がありますし、行政法と一括りにくくっても、行政法とは総称でありその中には細かい法律がいくつもあります。
これらメイン科目をやるだけでも、勉強範囲が広いので効率的に勉強をしないと、試験本番までに間に合わない状態に陥ってしまいます。
また行政書士試験では、商法も出題範囲に入っています。
商法こそ条文数もかなり多い科目になるので、出題数と商法との勉強を秤にかけると、とても費用対効果の悪い科目となっています。
2024年の行政書士試験から、一般知識などが基礎知識に変わり、多少出題範囲が絞られるようにはなりました。
この点から少々基礎知識は勉強しやすくなったと思われますが、一般知識に関してはそれこそどこが出題されるか気の遠くなるような試験範囲であるため、勉強の対策が取りにくい科目となっています。
行政書士試験はこれらのことより、適切な対策を行いつつ勉強をしないと、なかなか合格レベルまでの知識をつけることが難しい試験となっています。
仕事をしながらの受験者が多い
私もフルタイムで仕事をしながら受験していました。
勉強時間の確保が一番の難関だったと言っても過言ではありません。
行政書士試験は、他の法律系資格試験と比べると、仕事をしながらの受験者数が多いです。
法律系資格試験の中では、受験資格もなく受験しやすい資格であるため、社会人の方でも挑戦する方が多い傾向にあります。
仕事をしながらであれば、当然勉強時間に制約が出てしまい、総勉強時間が少なく勉強不足のために合格に至らないというケースもあるでしょう。
また仕事をしながらの受験者の場合、もちろん全員ではありませんが、数年単位で合格を目指す計画をしている受験者も相当数いると聞きました。
かくいう私も、仕事をしながらだと、断然勉強時間が少ないと実感していましたので、合格するまでに数年かかるだろうなという思いは、割と最初の頃から感じていました。
とりあえず受けてみる人が多い
行政書士試験には受験資格が無いので、誰でも受験できます。
この誰でも受験できると言うのがポイントで、このような試験では全員がガッツリ対策をして受験しているとは言い切れません。
つまり、誰でも受験できる故に、ガチ勢割合が低いと言い換えることができます。
そうなると、行政書士試験は勉強しなくても受かる試験ではないので、必然的に合格率が伸びないという結果になるのです。
私は最初の年は、確実に勉強不足と認識したうえで、試しに受けてみたという感じです。
私はまさしくこれです。
受験の最初の時は、基本書を読んで過去問を数問やった程度で、行政書士試験の本番が来てしまいました。
法律の初心者がこの程度で受かることはありえないですが、試験も申し込んでしまっていたので、全国模試的な感覚で受験しました。
私のように試しに受けてみる、とりあえず受けてみる、という受験者が一定数いると思われます。
このとりあえず受けてみる中には、勉強が間に合わないけれども受験してみたという場合や、行政書士は簡単だと言われているから受かるだろう、という感覚で受験された方もいるでしょう。
お試し受験や記念受験と呼ばれる、受験生群ですね。
行政書士試験が絶対評価試験であるのに関わらず、合格率が10%程度と低いのは、この部分の理由が一番大きいと考えます。
要は対策不十分のまま受験する受験者が多いため、合格率が伸びていないということです。
複数回受験者が多い
勉強不足だと確実に不合格になります。
実は行政書士試験は、複数回受験している受験者も一定数います。
仕事をしながらの受験生の場合、合格まで数年単位を見て計画している場合もあります。
私も1回で合格したわけではないので、この複数回受験者の人数に入っています。
行政書士試験は少々運ゲー的な要素もあると、言われることもありますが、勉強する方向性はそう変わるものではないので、正しい勉強の方向性で対策を取ることが必要です。
私自身独学だったのでどのように勉強するかは、自分で工夫するしかなかったのですが、特に気をつけたことは、ただ暗記だけに頼らず、覚えた知識を少しでも応用して活かせるように、過去問を使いつつ勉強をしていました。
不合格だったことを何年も繰り返しても、時にはそれが報われないことがあります。
なぜ不合格だったのかの理由をまずは振り返り、その原因を少しでも回避することができれば、合格に近づけるかもしれません。
あと私の経験から、意識の問題ではありますが、初めから数年計画での受験を考えるより、短期決戦での計画にした方が、集中力も増し、甘えが消えるので、合格に近いという感覚があります。
行政書士試験は合格率が上がる可能性の高い試験でもある
行政書士試験の受験ガチ勢割合が上がれば、合格率は確実に上がる。
行政書士試験は、合格率がもっと上がる可能性のある試験だとも言えます。
上記の、合格率が低いと思われる原因がクリアになり、予備試験・司法試験・司法書士試験のようにガッツリ受験者が増えれば、絶対評価試験の行政書士試験は、合格率が跳ね上がる可能性が高いのではないでしょうか。
私もそうでしたが、ある意味片手間受験者が多いので、もっとガッツリ時間が割け、効率的に勉強ができれば自身の合格もグッと近づきます。
そうなると合格率もアップするはずですよね。
仕事をしていたら、それが難しいのだけど。
仕事をしながらの合格は、合格だけでなく、社会人としてのスケジュール管理などの能力もアップするかもしれません。
現状行政書士試験は絶対評価試験ですので、頑張り次第では皆に合格のチャンスがあるのです。
他の資格試験と比較した行政書士試験の難易度
まず、行政書士試験と比較されやすい他資格とは何でしょうか。
- 予備試験
- 司法試験
- 司法書士試験
- 宅建士試験
- 社会保険労務士
このあたりがよく行政書士試験と比較されがちな試験ですね。
括りとしては法律系資格ということです。
ただこの中で社会保険労務士試験に関しては、試験科目が他資格と大きく異なり、一括りに考えにくい試験のため、今回のテーマから省いて考えていきます。
他資格と比較すると言っても、正直比較しにくい所ではあります。
試験科目も違うし、試験形式も異なるからです。
この辺りは、参考としてよく比較されているので、今回は簡単に触れておきたいと思います。
難易度順に並べると以下です。
行政書士試験は法律系資格試験の、入口的な位置にあると言われる所以ですね。
- 予備試験
- 司法試験
- 司法書士試験
- 行政書士試験
- 宅建士試験
何を以て比較するのが良いのかとても悩みます。
合格率での比較は現実的ではないからです。
例えば行政書士試験は合格率10%台ですが、司法試験の合格率は20~40%台です。
合格率だけ見ると行政書士試験の方が低いですが、だからと言って行政書士試験は司法試験よりも難易度が高いのでしょうか。
これには多くの方が否とお答えになると思います。
詳しい比較は別記事で投稿しようと思いますが、単純に試験科目の多さと試験形式の難易度で、この順位であるということができます。
またここには掲載しませんが、予備試験・司法試験・司法書士試験は相対評価試験でもあるため、〇〇点取ったから合格と言えないところが、難易度に拍車をかけています。
簡単に言うと上位の成績を取らないと合格できません。
以下の表は、法律系資格試験の試験形式と試験科目を一覧にまとめました。
資格 | 試験形式 | 試験科目 |
予備試験 | 短答式試験 論文式試験 口述式試験 | 短答式試験…民法・商法・民事訴訟法、憲法・行政法、刑法・刑事訴訟法、一般教養科目 論文式試験…憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法 、民事実務基礎、刑事実務基礎、選択科目 |
司法試験 | 短答式試験 論文式試験 | 短答式試験…民法、憲法、刑法 論文式試験…憲法、行政法、民法、商法、民事訴訟法、刑法、刑事訴訟法、選択科目 |
司法書士試験 | 択一式試験 記述式試験 口述式試験 | 憲法・民法・刑法・商法 民事訴訟法・民事執行法・民事保全法 司法書士法 供託法 不動産登記法(択一式) 商業登記法(択一式) 不動産登記法(記述式) 商業登記法(記述式) |
行政書士試験 | 択一式試験 記述式試験 | 憲法・行政法・民法・商法 基礎法学・行政書士の業務に関し必要な基礎知識 |
宅建士試験 | 択一式試験 | 民法等・宅建業法・ 法令上の制限・その他関連知識 |
行政書士試験と司法書士試験では、試験形式で記述式試験とありますが、試験内容が全く異なります。
- 行政書士試験
-
40字程度の記述
- 司法書士試験
-
不動産登記法・商業登記法、それぞれで実務に即した申請書を書き上げる
司法書士試験の記述式は、申請書をその場で書かなくてはならず、難易度はそれだけ格段に跳ね上がります。
私の感覚では、行政書士試験と司法書士試験との難易度の差はかなり大きいと考えています。
このように行政書士試験は他の法律系資格試験よりも、試験科目が少なく、記述式も簡易であるため、この中では難易度は低めと言えます。
だからといって、ホイホイ合格できる試験ではないので、しっかり対策を取り勉強をした上で挑むことが必須です。
合格者の声から学ぶ行政書士試験対策のコツ
当ブログ、なりたまでも、私の経験を元に記事を書いています。
当ブログ、なりたまだけでなく、合格体験談はネット上でも多数掲載されていますので、いくつか読んでおくのがおすすめてす。
他人の嬉しい報告なんて。
と、私も卑屈になっていた事もありますが、先人の知恵です。
- どんな勉強をしたか
- どんなテキスト、問題集を使ったか
- どんな工夫をして勉強したか
- 同じ苦労をしたと共感でき、やる気が出る
- 自分のダメな部分が見えてくる
など、そんなの当たり前の事じゃん、と思われるかもしれませんが、自分にはない新たな発見があるかもしれません。
実際に成功した方の体験なので、自分に合う合わないはありますが、いくつか体験談など読めば、そこで取捨選択ができます。
良いものは取り入れ、失敗したものは回避する。
この柔軟な思考は、勉強も今後の開業も、役に立つものです。
成功体験を真似する。
ビジネス本など読むと、よく書かれています。
確かにそうだなと、仕事やブログなどやっていると思います。
また、合格体験談を読むと、私も頑張ろうとやる気アップにも繋がりますので、気分転換の一環として読んでみてはいかがでしょうか。
今回のまとめ。行政書士試験は一筋縄ではいかない試験です。
行政書士試験は一筋縄ではいかない試験です。この試験に合格するには、やはりきちんとした勉強や対策が必要です。
受験生個々人で、受験状況は違います。
- 今まで法律の勉強をしたことがある人
- 法律の勉強が初めての人
- 予備校に通う人
- 独学で勉強する人
- 専業受験生(勉強に注力できる)の人
- フルタイムで働きながら勉強する人
そもそものバックボーンが違うので、当然皆同じ条件で勉強ができる・進むわけではありませんよね。
法律の勉強をしたことがあれば、少なくとも法律知識や法律的思考の下地があるので、行政書士試験は簡単と言わずも、受験に戦い抜くだけの底力があるでしょう。
一方、初めて法律を勉強する人には、法律用語で躓くなど、とても難しく感じるかもしれません。
そのため一括りで述べることは決してできませんが、少なくとも全然勉強しなくても合格できる、と言える程甘い試験ではありません。
現に法律の勉強をしていても、行政書士試験に不合格になっている人もいます。
ただし他資格の勉強をしていても、科目が違う、問われる角度が違うなどがあるので、やはり行政書士試験の勉強は一通り必要であると考えます。
行政書士試験は民法・行政法と範囲の広い科目が主軸に置かれている試験でしたね。
行政書士試験は法律系資格の、入門的な位置づけがされている傾向にありますが、範囲が広く結構意地悪な問題も出題されます。
絶対評価の試験なので、もし出題が本当に簡単なのであれば、合格率が10%台なんてことは考えにくいです。
合格点の180点を取れば(足切りもありますが)、規定の点数を獲得できれば、皆等しく合格できる試験なのですから。
勉強不足や試験対策不足、など不合格の原因は色々考えられますが、頑張って勉強していてもあと一歩届かなかったということもあります。
これらのことから、行政書士試験はやはりきちんと勉強や対策を取り挑むべき試験であると言えます。
自分の経験からは、勉強の仕方や方向性などしっかりした対策と、自分の身に染み込むような勉強時間が必要だったなと感じています。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。