行政書士と司法書士のダブルライセンス相性は?仕事の相乗効果とメリット・デメリット

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行政書士と司法書士の相性は?ダブルライセンスとしての相乗効果を考える

行政書士のダブルライセンスと言われて挙げられる資格の中に、司法書士資格があります。

行政書士資格と司法書士資格の組み合わせは相性が良いと言われており、業務の幅を広げる強力な武器になり得ます。

果たしてそれは、何でしょうか?

司法書士試験は行政書士試験よりも試験科目も多く、何より実務に直結した申請書を書く記述式もあり、難易度は格段に高い資格です。

司法書士は不動産登記や設立登記など登記業務がメインの資格のため、行政書士とは連携するケースがとても多いこともありダブルライセンスとして注目される1つなんですね。

今回はこの2つの資格の相性や相乗効果、さらに開業後のメリット・デメリットについてみていきます。

目次

司法書士資格って何?

司法書士イメージ
なり

まずは司法書士について分からないとイメージしにくいので、簡単にご案内してみますね。

司法書士も行政書士と同じく、士業と呼ばれる法律系国家資格です。

司法書士の合格率は4%程、確実に難関資格です。

もし司法書士試験の受験を考えるとしたら、行政書士とは憲法と民法、商法以外共通点がないので、改めて勉強しなおす必要があります。

また行政書士は申請業務として行政と関わるケースが多いため、行政法の勉強比重が多い試験でしたね。

対して司法書士は不動産や会社の問題を扱うため、民法や商法の比重が多くなります。

そして簡裁訴訟代理業務(一定の額の訴訟に関与できる(140万円以下)/別に資格必要)があるため、民事訴訟法など勉強が必要です。

民法や商法は行政書士試験で勉強をしましたが、難易度や勉強の深さと範囲をいえば、難易度はグッと高いことは間違いありません。

行政書士は総務省管轄の資格で、司法書士は法務省管轄になります。

仕事内容としては不動産登記・商業登記と、法務に関わる業務を担います。

行政書士と司法書士は業務分野に重複・隣接部分が多く、相性が良い資格の組み合わせと言えます。

行政書士と司法書士の主な業務範囲の違いと共通点

ここでは行政書士と司法書士の業務範囲を見ていきます。

行政書士は官公書などの行政関係の業務になりますが、司法書士は法務局とのやり取りが主となります。

以下に行政書士と司法書士の主な業務範囲の違いと共通点をまとめた表を掲載します。

行政書士司法書士
主な業務官公署への書類作成・提出代理、契約書作成など不動産登記・商業登記の申請代理、裁判所提出書類作成など
顧客層一般個人、法人(起業支援、相続、許認可など)不動産取引関係者、中小企業、相続関係者など
独占業務許認可申請(建設業、風俗営業、産廃など)登記手続きの代理業務
共通する分野相続、遺言、会社設立、成年後見、契約書作成など
行政書士と司法書士の主な業務範囲の違いと共通点

行政書士も司法書士も書士といわれるだけに、書類作成業務を生業とすることになります。

それぞれ扱う書類が異なるので、書類業務自体競合することは極端に多くありません。

ですが、扱う分野は共通することが多いと感じられるのではないでしょうか。

行政書士と司法書士の職域イメージ図
行政書士と司法書士の職域イメージ図

扱う分野が共通するということは、顧客の悩みから導かれる一連の業務で関連性が多いとみることができます。

また正に競合する場合があると言うこともできます。

例えば遺言について

ここでは行政書士と司法書士が共通する分野である、遺言をピックアップして考えてみます。

遺言に関しては、WEBサイトを検索してもわかる通り、多くの行政書士や司法書士が業務として行っています。

高齢化社会ということもあり、案件的にも多いというのも理由の1つと考えられます。

下記の表のように、行政書士と司法書士で、

  • やれること
  • やれないこと
  • 競合すること

をまとめてみました。

行政書士司法書士
やれること・自筆証書遺言の文案作成支援
・公正証書遺言の文案作成支援

・公証人との打ち合わせ代行
・相続人・相続財産の調査
・遺言書の保管制度に関するサポート
・自筆証書遺言の文案作成支援
・公正証書遺言の文案作成支援

・不動産の相続登記に向けた事前アドバイス
・遺言執行者に就任することも可能
やれないこと・登記手続き(遺言に基づく相続登記など)
・代理での登記申請
・公正証書遺言の作成を公証人の代わりに行うこと
・行政官署への書類提出代理(建設業許可など)
競合すること(重複領域)・遺言文案の作成支援
・公証役場とのやり取りのサポート
・相続に関する相談対応
遺言作成に関する業務比較例

顧客から相談を受け、遺言書の作成そのもの(文案作成)は、行政書士も司法書士も行えます。

上記表のやらないこと部分では、各資格の特徴が出ていますね。

  • 行政書士は「書類作成業務」に特化しており、本人の意思確認を重視した書面の整備が得意
  • 司法書士は「相続登記」ができるため、不動産が関係する相続・遺言には特に強み

これらのことから、もし行政書士と司法書士でダブルライセンスを持っていた場合、たとえば「不動産を長男に相続させる」といった内容の遺言であれば、最初の相談業務から、将来的な登記まで見据えたアドバイス、そして手続きが可能となります。

競合ポイントとしては、文案作成支援や遺言に関する相談ですが、司法書士は法的トラブルの可能性が高い相続に強く、行政書士は予防法務的な視点から丁寧な文書作成に強みがあります。

行政書士と司法書士のダブルライセンス相性とは?

行政書士と司法書士のダブルライセンスは、非常に相性が良い組み合わせとされています。

なぜなら、両資格ともに法務分野に関わる業務を中心としながら、それぞれがカバーする業務範囲が異なりつつも補完関係にあるためです。

たとえば、会社設立のサポートを考えた場合、

  • 行政書士……定款の作成や電子認証などを担当
  • 司法書士……会社の登記申請を担当

このように、ひとつの手続きの中でも両資格の役割が連携できる場面は多くあります。

また、相続に関しても、

  • 行政書士……遺産分割協議書の作成や相続人調査などを行い
  • 司法書士……不動産の相続登記を行う

というように、業務の流れがつながっています。

このような連携によって、クライアントに対してワンストップサービスを提供することが可能となり、顧客満足度の向上やリピート・紹介といった形での集客にもつながりやすくなります。

なり

ダブルライセンスが無くとも、士業同士が連携するとは、こういうことを言うんですね。

信頼できる司法書士、税理士、弁護士などと連携して、顧客をサポートしていくのも士業の仕事の1つということがよく分かります。

話は戻って、行政書士と司法書士のダブルライセンスがあることにより、一連の業務がスムーズに行える他、収入源が増え、経営の安定にもつながるメリットがあります。

一方で、ダブルライセンスにはもちろん注意点もあります。

両資格の登録や会費などの維持費が発生することや、業務量が増えることによる負担、さらには専門性が分散してしまうリスクもあるため、より戦略的な業務の選択と効率的な運営が求められます。

このように、連携がしやすい行政書士と司法書士のダブルライセンスですが、うまく活かせば非常に強力な武器となり、法律系士業としての信頼性・業務の幅・収益性すべてを高める相性の良い組み合わせであるということです。

行政書士と司法書士のダブルライセンスのメリット

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行政書士と司法書士のダブルライセンスには、法律実務の幅が一気に広がるという大きなメリットが!

行政書士と司法書士、それぞれの資格が担う業務の特性を理解し、組み合わせて活用することで、単なる「二刀流」ではなく、実務上の強力な武器になる可能性を秘めています。

資格の特性が違うからこそ、補完し合える関係に

  • 行政書士は主に官公署への許認可申請や契約書、遺言書といった各種書類の作成を担う
  • 司法書士は不動産登記や会社設立登記、さらには相続登記など、法務局を中心とした手続きに強み

このように行政書士も司法書士も、どちらも「書類を扱う」点では共通していますが、その活躍のフィールドは微妙に異なります。

この両者を兼ね備えることで、たとえば会社設立に関する業務では、行政書士として定款を作成・認証し、司法書士として設立登記を申請するという、一連の手続きをワンストップで対応することができます。

また、相続に関しても、戸籍収集から相続関係説明図や遺産分割協議書の作成、さらには相続登記までを一人で完結することが可能です。

一人で完結できるから、依頼者にとっても大きな安心感

依頼者の立場からすると、複数の専門家に別々に相談する手間がなくなることは非常に魅力的です。

窓口が一つで済むということは、時間的にも経済的にも負担が少なく、何より手続きがスムーズに進むからですね。

そもそも、「誰に相談したらいいか分からない」と悩む依頼者に対して、行政書士と司法書士両方の業務に対応できることは、大きな安心感につながり、結果として顧客満足度の高いサービスを提供できるようになります。

案件が新たな案件を生む、自然な業務拡大につながる

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隣接するような資格同士だからこその連携が見え隠れしています。

ダブルライセンスのもう一つの強みは、ある業務の中に次の案件のヒントが隠れていることです。

たとえば、行政書士として依頼された相続相談の中に、相続登記の必要が出てくることがあります。

そこに司法書士として対応できれば、他の士業に仕事を回すことなく、自分で完結させることが可能です。

逆に、司法書士として受けた会社登記の案件から、「建設業許可を取りたい」といったニーズが出てくることもあります。

そうしたときも、行政書士として対応可能であれば、業務が連鎖的に広がっていくのです。

信頼感がアップし、紹介やリピーターにつながる

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信用・信頼・安心第一!

「この人に任せれば全部やってくれる」という印象は、依頼者にとって非常に心強いものです。

行政書士・司法書士のダブルライセンスは、それだけで高い専門性や信頼性を感じさせる要素になり得ます。

その結果、相談者の安心感につながるだけでなく、紹介や継続的な依頼も増える可能性が考えられます。

特に地域密着型の業務を展開する場合には、この“信頼感”が仕事の継続性に大きく寄与します。

人は感情の生き物と言われることがあります。

人同士、合う合わないもあるでしょう。

この人に頼みたい、この人には頼まない、ダブルライセンス問わず、この人に頼みたいと思われるような仕事をしていきたいですね。

ダブルライセンスは「掛け算」で強くなる

行政書士と司法書士、2つの資格を単に「足し算」するのではなく、業務と業務を組み合わせることで、その効果は何倍にも広がる可能性が考えられます。

それぞれの資格の得意分野を活かし、補い合うことで、依頼者にとっても、事業者にとっても価値あるサービスを生み出すことができるのです。

行政書士と司法書士のダブルライセンスは、単なる資格の二重取得ではなく、実務において真の「掛け算」の力を発揮する組み合わせです。

地域に根ざした法務サービスを提供したい方や、独立開業で強みを持ちたいと考えている方にとって、大きな可能性を秘めた選択肢といえるでしょう。

行政書士と司法書士のダブルライセンスのデメリット

行政書士と司法書士、どちらも独立開業に向いている国家資格であり、それを両方持つことで業務の幅が大きく広がるのは確かです。

しかし、ダブルライセンスにも当然ながら「落とし穴」や「想定すべき課題」は存在します。

むしろ、2つの資格を持ち、運営していくことは、行政書士だけで運営していくよりも、苦労や努力が更に必要になってくると考えます。

ただ資格を2つ取ればうまくいくわけではない、という現実をしっかり肝に銘じることが何より重要です。

司法書士試験の学習・取得のハードルが高い

まず最初の壁は、資格取得の難易度です。

行政書士試験は独学でも合格可能なレベルとはいえ、法律初学者にとっては決して簡単ではありません。

さらに司法書士試験は、合格率が4%前後と非常に厳しく、数年単位の勉強を必要とする国家試験です。

そもそも司法書士試験は、日本の難関資格は?と問われて名前が挙がるほどの資格試験です。

司法書士試験合格者のお話を聞くと、毎日8時間の勉強は当たり前、という方がたくさんいます。

行政書士試験に合格したから、次は司法書士試験、と簡単に考えられるレベルではない厳しい試験であると言われています。

また資格の難易度もさることながら、ダブルライセンスを目指すということは、開業後も2つの専門分野を深く学ぶ必要があるということです。

開業後も相応の努力と時間、そして費用がかかることは覚悟が必須です。

業務範囲が広すぎて中途半端になるリスク

行政書士と司法書士のダブルライセンスを持っていることで、対応できる業務は増えます。

ですがその分だけ管理や習得すべき知識・ノウハウも2つ分です。

しかも、どちらの資格も専門性が高く、法律や制度の改正にも常にアンテナを張っておくことが必須です。

結果として、「広く浅く」になってしまい、どちらの分野でも中途半端な印象を持たれてしまうリスクも否定できません。

実務の現場では、深い知識と経験が求められることも多く、「何でもできる人」よりも「この分野のプロ」として見られることが信頼に直結する場合もあります。

そのため開業後にその業務が本当に必要か、やりたいことなのか十分に検討しておく必要があります。

開業コスト・維持費が二重になる可能性

行政書士と司法書士、それぞれで登録料や会費、研修費用などが発生します。

特に開業を前提にすると、それぞれの事務所登録費や所属会への費用がダブルで必要になるケースもあります。

さらに、業務ソフトや判例データベース、保険料などもそれぞれの業務に応じた準備が必要になり、ランニングコストが意外と重くのしかかってくることがあります。

資格を活かすどころか、経費に押されて事務所経営が苦しくなるということも考えられるのです。

そのため開業後の資金繰りも含めた、入念な計画が必要になります。

「使い分け」に悩む場面もある

実際に開業したあと、行政書士として契約書を作成するのか、それとも司法書士として対応するのか、といった「名義上の使い分け」が必要になる場面があります。

特に、法的な権限の違いや職域制限をしっかり把握しておかないと、業際トラブルのリスクもあります。

顧客とのトラブル以外にも、行政書士と司法書士それぞれに於いて、罰則を受けてしまう可能性が無いとは言い切れません。

開業後はどちらの資格を前面に出して営業すべきか、ホームページや名刺でどう表現するかなど、経営のブランディングやマーケティング上の判断にも迷いが生じやすくなります。

資格があっても顧客は来ないという現実

ダブルライセンスを持っていれば自然に依頼が来る――そんな期待を抱いてしまいがちですが、現実はそう甘くはありません。

結局のところ、どんな資格を持っていても集客力や営業力、信頼構築力がなければ仕事にはなりません。

特に開業直後は、「何をやっている人なのか分からない」「結局この人に何を頼めるのかが見えにくい」と思われてしまい、顧客に届かないこともあります。

資格だけでは食べていけないのが、士業の世界のリアルです。

焦らず、自分の「軸」を見つけることが大切

ダブルライセンスはたしかに強力な武器になりますが、それを使いこなすには明確な戦略や専門分野の軸が必要です。

ただ資格を2つ並べただけでは、メリットが霞んでしまい、むしろブレやすい印象になる危険性もあります。

これはプラスどころかマイナス要因になってしまいかねません。

まずは自分がどんなサービスを提供したいのか、どんな顧客層に向けて活動したいのかというビジョンを明確にし、そのうえで2つの資格をどう活かすかを考えることが重要です。

焦らず、じっくりと「強みの掛け合わせ方」を磨いていくことが、成功への近道になるでしょう。

行政書士も司法書士も開業をするのであれば、一事業主に外なりません。

開業をして何をやるのか軸をしっかり決め、マネジメントしていく必要があります。

今回のまとめ。ダブルライセンスは「掛け算」で強くなる!

ダブルライセンスとは、単に資格を2つ持っているという意味ではありません。

行政書士と司法書士、それぞれの資格が持つ強みをうまく組み合わせることで、1+1ではなく、何倍もの力を発揮することができるということです。

  • 相続手続きをすべて一人で対応したい
  • 許認可と登記をまとめて請け負いたい
  • 顧問契約に発展しやすい分野を開拓したい

たとえば、行政書士として依頼を受けた相続手続きの中で、相続登記が必要な場面があれば、司法書士としてスムーズに対応できるます。

その逆に、司法書士として不動産登記の相談を受けた際に、必要な遺言書の文案作成や公正証書の手配を行政書士として進めることもできます。

こうした流れを自分一人で完結できるのは、ダブルライセンスならではの大きな強みです。

また、依頼者にとってもワンストップで手続きが進められるのは大きな安心につながります。

別々の専門家に相談する手間が省け、時間もコストも節約できるため、信頼感はぐっと高まります。

その結果として、リピーターや紹介による依頼が増える、継続案件に繋がる可能性がある、という好循環も生まれてきます。

もちろん、ダブルライセンスだからといって何でも一人でこなす必要はありません。

しかし、対応できる選択肢が広がっているというだけで、仕事の自由度や安定感は大きく変わってきます。

特定の分野に特化したり、地域のニーズに合わせたサービス展開をする上でも、この2つの資格の組み合わせはとても柔軟性が高く、可能性に満ちています。

だからこそ、行政書士と司法書士のダブルライセンスは、「足し算」ではなく「掛け算」なのです。

ただし、2つの大きな資格を扱うには、継続的な勉強や情報収集、資格に関する各種維持費など、デメリットともいえる大きなハードルもあります。

そもそも司法書士試験自体、合格率も4%程と、行政書士試験よりもかなり難関の試験に突破しなければなりません。

行政書士と司法書士、ダブルライセンスを目指すには資格取得から、大きな山があるので、より計画的に自分の進みたい道を考える必要がありますね。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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