「行政書士として独立開業したいけれど、もう一つ武器が欲しい」「宅建士として働いているけど、業務の幅を広げたい」
そんな方に注目されるのが、「行政書士×宅地建物取引士」のダブルライセンスです。
どちらも法律系の国家資格でありながら、活躍のフィールドや業務内容は異なるこの2つの資格。
だからこそ、うまく組み合わせることで、他にはないサービス展開やキャリア形成が広がる可能性を秘めています。
特に不動産を手掛けたい方には、最強の組み合わせと言っても過言ではありません。
この記事では、まず宅建士の資格について基本を押さえたうえで、行政書士との違いや共通点、ダブルライセンスの相性をみていきます。
さらに、実際にこの2つの資格を併せ持つことによるメリット・デメリットについても考えます。
これから行政書士や宅地建物取引士の資格取得や開業を考えている方、すでに片方の資格をお持ちの方のヒントになれば幸いです。

宅地建物取引士資格って何?


宅地建物取引士というと何?と思われる方もいるかもしれません。
でも、宅建士(宅建)って、一度は聞いたことがありませんか?
宅地建物取引士(通称:宅建士)は、不動産取引において欠かせない国家資格です。
不動産の売買や賃貸などを行う際に、契約の重要事項を説明し、書類への記名押印を行うことが主な業務です。
特に不動産会社では、一定の割合で宅建士の有資格者を在籍させることが法律で義務づけられているため、就職や転職市場でもニーズが高い資格の一つとされています。
いわば不動産のスペシャリストでもありますね。
試験は毎年10月に実施され、年齢・学歴に関係なく誰でも受験でききる試験で、受験者数も20万人オーバーの人気資格です。
法律を中心とした科目で構成されており、合格率は例年15〜18%前後と、決して簡単ではありませんが、独学での合格も十分可能なレベルです。
試験は4肢択一式のマークシート方式で50問出題されます。
試験内容としては、一般財団法人 不動産適正取引推進機構のWEBサイトに掲載されています。
土地の形質、地積、地目及び種別並びに建物の形質、構造及び種別に関すること。
土地及び建物についての権利及び権利の変動に関する法令に関すること。
土地及び建物についての法令上の制限に関すること。
宅地及び建物についての税に関する法令に関すること。
宅地及び建物の需給に関する法令及び実務に関すること。
宅地及び建物の価格の評定に関すること。
宅地建物取引業法及び同法の関係法令に関すること。



いや、ガッツリ不動産関係の内容だとは分かるけど、具体的には何を勉強すればいいの?
なかなか分かりにくい試験範囲です。
要約すると、民法、不動産登記法、宅建業法、法令上の制限、税・その他の法令という試験範囲になります。
行政書士試験の試験科目と照らし合わせると、民法が共通しますが、上記試験内容を見るとお分かりの様に、同じ民法でも問われる部分が異なります。
例えば宅地建物取引士で民法の勉強をしていたからといって、行政書士試験で通用するかといえば、問われるポイントが異なるので、なかなか難しいでしょう。
これは逆も然りです。
そのため宅地建物取引士も行政書士試験も、それぞれ各資格に見合った対策を行う必要があります。
行政書士と宅地建物取引士の主な業務範囲の違いと共通点



不動産業務と行政書士の職域である許認可業務などは、実は大きく関連している内容でもあります。
行政書士と宅地建物取引士は、どちらも法律知識を活かす国家資格ですが、その業務範囲は明確に異なります。
行政書士は、主に官公庁に提出する書類の作成や手続き代理、相談業務などを行います。
建設業や許認可申請、在留資格手続きなど、取扱う業務の幅は非常に広く、「街の法律家」とも呼ばれる存在です。
一方、宅地建物取引士は、不動産取引のプロフェッショナルです。
不動産の売買契約における重要事項説明書の交付や契約書のチェックなど、実務的・現場的な業務が中心です。
活躍の場としては不動産業界になります。
このように同じ法律系と言っても、畑が異なりますが、業務に関連性がないとは言えません。
たとえば不動産業者が建設業許可を取る場合、行政書士のサポートが必要になりますよね。
また、契約書の作成や法的なチェックなど、両資格が連携する場面もあります。
つまり、分野は違えど、相互補完し合える関係性があると考えることができるのです。
行政書士と宅地建物取引士のダブルライセンス相性とは?



不動産のスペシャリストを目指すなら、ベストマッチ!
行政書士と宅地建物取引士は、業務範囲の違いこそあれど、法律を基盤とする点で非常に相性が良い組み合わせです。
不動産分野に関心がある行政書士や、法務知識をより深めたい宅地建物取引士にとって、双方の資格を取得することで現状の業務の幅を大きく広げることが可能となります。
特に、不動産業界では行政書士の力が必要となる場面が少なくないからです。
たとえば、宅地建物取引士として不動産売買を行う際に、行政書士として建設業許可の申請や法人設立をサポートできると、クライアントにとってはワンストップでのサービス提供が可能となり、非常に魅力的です。
このように、ダブルライセンスによって付加価値の高いサービスが提供できることは、他の士業との組み合わせ以上に、不動産関連に特化した実務的な相乗効果を生みやすい特徴があります。
そして宅建士の資格を取得すれば、不動産物件の仲介や建物の取引、土地の取引などが可能になるので、開業することも夢ではありません。
ただし実際に不動産を取り扱うとなると、開業の流れ自体はそう難しくなくても、実務としては行政書士と宅地建物取引士のダブルライセンスがあるからと言って、簡単にできることではありません。
この場合は不動産業界での就職を考え、行政書士と宅地建物取引士のダブルライセンスを活かしたほうが、両者の資格の力を如何なく発揮できる可能性が高い場合が考えられます。
そして不動産に関しての伝手や経験を積んだのち、開業をすると、行政書士と宅地建物取引士のダブルライセンスが強力な武器となるでしょう。
逆に考えると、不動産会社から許認可等の依頼を行政書士として受注する場合、有利とまでは言えませんが、宅地建物取引士を取得していることで、依頼をしやすいイメージを持たせることも可能になります。
不動産関連に強い行政書士であるとアピールしやすくなりますね。
そもそも不動産に特化した宅地建物取引士では、不動産という実態のあるモノの取引がメインになるので、モノという実態のない(書類や相談など)行政書士とは、見方を変えて考える必要があります。
行政書士と宅地建物取引士のダブルライセンスのメリット
行政書士と宅地建物取引士、どちらも単体で十分に活躍できる国家資格ですが、この2つを組み合わせることで生まれる“相乗効果”は決して小さくありません。
ダブルライセンスという強みを活かすことで、業務の幅を広げたり、独立開業の際に他の士業との差別化を図ることができます。
ここでは、行政書士と宅建士のダブルライセンスを持つことで得られる具体的なメリットについて、見ていきましょう。


不動産分野に強みを持てる
不動産業に携わる上で、宅地建物取引士の資格は必須ともいえる存在です。
そこに行政書士の資格が加わることで、建設業許可や農地転用、開発許可など、より専門的で高度な手続きに対応できるようになります。
宅地建物取引士単体の資格保持でいるよりも、行政書士とのダブルライセンスを持つことで、より不動産業界内でのポジションや信頼性を高めることが可能です。
不動産に興味があり、扱いたいと考えている方には、最強のコンビネーションになることでしょう。
ワンストップサービスが実現可能に
不動産売買を希望する顧客に対して、物件紹介から契約、そして必要な法的手続きまで一貫して対応できる体制を整えることで、他社との差別化を図ることが可能になります。
顧客からの信頼を得やすく、リピーターや紹介の獲得にもつながるでしょう。
業務の幅が広がり収入の柱が増える
行政書士業務と宅建業務、それぞれ単独でも成り立つものですが、ダブルライセンスを持つことで、安定した収入源の確保が期待できます。
特に行政書士として独立を目指す方にとっては、大きな武器になります。
法律知識の相乗効果で実務力アップ
行政書士と宅地建物取引士の両資格の学習を通じて得られる法律知識は、重なる部分も多く、理解が深まることで実務上の判断力や提案力も向上します。
たとえば、契約におけるリスクの指摘や、より的確な説明が可能になるため、クライアントからの信頼も厚くなります。
行政書士と宅地建物取引士のダブルライセンスのデメリット
一見メリットばかりに思える行政書士と宅地建物取引士のダブルライセンスですが、実際には注意すべき点や想定しておくべき課題もあります。
資格を2つ取得するには当然コストや時間がかかりますし、業務範囲が広がる一方で、自分の強みがぼやけてしまうリスクもあるのです。
ここでは、ダブルライセンスを目指す前に知っておきたいデメリットや注意点について、具体的な視点から解説していきます。


両資格の取得にはそれなりの労力が必要
どちらの資格も独立して難易度の高い国家資格です。
宅建士は比較的短期合格も狙えますが、行政書士は範囲も広く学習量が多いため、同時取得や連続取得を狙う場合には計画的な学習が欠かせません。
特に働きながら取得を目指す場合、時間的な負担は大きくなります。
開業時に事務所の整備が必要
行政書士として開業するには、事務所の設置要件や登録審査があります。
一方、宅建業で開業する場合も、事務所の設置や供託金、保証協会加入など、初期コストがかかるのが難点です。
ダブルライセンスを生かして独立を目指す場合、これらの準備を同時に進める必要があり、手間と費用がかさむ可能性があります。
専門性が分散するリスク
行政書士も宅地建物取引士も、それぞれ専門性の高い分野です。
両方の知識を浅く広く扱うだけでは、中途半端な印象を与えてしまい、クライアントの信頼を得ることが難しくなることも考えられます。
ダブルライセンスを生かすためには、どちらか一方に軸足を置きながら、もう一方の資格を補完的に使うバランス感覚が求められます。
宅地建物取引士の資格の特性上、やはり不動産関連業務に近しい分野を専門にするのが一番でしょう。
今回のまとめ。不動産を扱いたい方には最強のダブルライセンス
行政書士と宅地建物取引士のダブルライセンスは、法律を土台にした非常に相性の良い組み合わせです。
業務の幅が広がることで、クライアントへの提案力が増し、独立・開業時にも強力な武器になります。
とくに不動産関連の手続きや法務業務に関心がある方には、おすすめできるライセンスの組み合わせです。
開業を考えた場合、行政書士と宅地建物取引士でダブルライセンスを武器に仕事をしていくには、宅地建物取引士の資格の特性上、不動産関係を軸に経営方針を組み立てるのがベストです。
そうでない場合、宅地建物取引士の資格を活かす場が殆どなくなってしまうからですね。
とはいえ、両資格を活かすには計画的な取得、開業準備、そして専門性の維持が欠かせません。
メリットだけに目を向けるのではなく、今後自分がどのような形で仕事をしていきたいか、長期的なビジョンを描いたうえでの判断が大切です。
また自分が開業する、業務を行う上で、デメリットを享受できるかを検討し無理のない計画を立てていけると良いですね!
最後までお読みいただき、ありがとうございました。